投資情報室

旬なテーマを深堀り♪電子タグ(RFID)で変革する小売業、最新動向と関連銘柄

2017年6月16日(金)
投資情報室 藤井明代

経産相が「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」を策定、電子タグ(RFID)とは?

4月18日、経済産業省は2025年までにセブン‐イレブン、ファミリーマート、ローソン、ミニストップ、ニューデイズの全ての取扱商品に電子タグを利用することについて、一定条件の下で各社と合意したと発表しました。これに合わせ、「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」を策定。小売業が抱える人手不足、労務コストの上昇、生産性などの様々な課題を解決するため、推計で年間1000億個の商品に電子タグを貼付け、商品の管理やサプライチェーンとの情報共有などを進めていく方針です。

電子タグとは、ICタグ、RFタグ、非接触タグとも呼ばれ、電波(電磁波)を用いて内蔵したメモリのデータを非接触で読み書きする情報媒体のことです。また、タグや読み取り機などを含めたシステムの総称を「RFID(Radio Frequency IDentification)」といいます。

現在広く利用されているバーコードの運用では、1枚ずつタグを読み取りするのに対し、RFIDは電波でタグを複数一括で読み取りすることができます。
そのため、小売業者はレジ・検品・棚卸、在庫管理や流通量の調整などで効率化を実現できるほか、万引き防止などの効果も期待されます。
また、医療分野での医療ミス防止、アミューズメントでのキャッシュレス対応、工場での生産管理、図書館での蔵書管理など様々な場面での利活用が進んでいます。

すでにファーストリテイリング(9983)が運営する「GU」では一部店舗で、東芝テック(6588)が開発したRFIDセルフレジの導入が進んでおり、レジの効率化や省人化に加え、中国語、韓国語、英語にも対応するスムーズな会計を実現しています。「GU」では2017年8月までに導入店舗を半数に拡大すると発表しています。
また、オンワードホールディングス(8016)はデンソー(6902)が出資するデンソーウェーブのRFIDを一部店舗で導入。検品などの作業効率を1/10に削減しており、2018年2月までに全面導入を予定しています。

このように、アパレル業界でRFIDの導入が先行し、効率化・省人化を実現していることから、経済産業省の電子タグ導入への取り組みに影響を与えたと思われます。

RFIDへ注力する関連銘柄は?

経済産業省の宣言では2025年までに電子タグの単価を1円以下にし、張り付けした商品をRFIDで管理できる環境が整備されていることが留保条件となっています。この対応に向け、各社もRFID関連事業を拡大する動きが加速しています。

大日本印刷(7912)は低価格電子タグの開発に着手し、現在約10円台の単価を2020年までに5円以下、2025年までに1円を目指すと発表しています。単価の高い電子タグのコスト負担を取り除き、コンビニ以外の業務効率化の導入ニーズにも対応していく意向です。
また、村田製作所(6981)は今月1日、RFIDシステムインテグレーターのイタリアベンチャー企業「ID-ソリューションズ」を約20億円で買収しました。ソフトウェアを含むRFID導入のソリューション提案力を高め、事業強化・拡大を図るためです。

このようにRFID領域の事業拡大や企業買収を発表する企業が散見され、中長期的な市場の拡大が視野に入っています。今後も、官民ともにRFID導入に向けた動きが加速していくことが予想されるため、関連銘柄への注目度も高まる可能性がありそうです。

以下より、主な電子タグ(RFID)関連銘柄をご紹介いたします。

【主な電子タグ(RFID)関連銘柄】
コード 銘柄名 市場 予想PER
(倍)
予想PBR
(倍)
時価総額
(百万円)
特徴・開示情報など
6981 村田製作所 1部 19.1 2.45 3,527,628 RFIDタグなどの製品を提供。2017年6月、伊・パルマ大学発ベンチャーでRFIDシステムインテグレーターのID-ソリューションズを20億円で買収。ソフトウェアを含むRFID導入のソリューション提案力を高め、事業強化を図る。
7912 大日本印刷 1部 29.2 0.73 806,710 2017年3月、低価格ICタグの開発に着手と発表。2020年までに単価5円以下、2025年までに1円を目指す。
6588 東芝テック 1部 27.0 2.47 170,006 RFIDソリューションを提供。ファーストリテイリングの「GU」のRFタグ利用のセルフレジは同社納入。
7862 トッパン・フォームズ 1部 19.9 0.77 134,090 2017年5月、ICタグなどIoT関連製品の生産体制増強のため、100億円を投じて新工場を建設すると発表。
6287 サトーホールディングス 1部 24.5 1.66 92,052 RFID関連製品・ソリューションを手掛ける。製品はICタグに高速で情報登録しながら印字するRFIDプリンタや貼付機、ハンディターミナルなど。
6145 日特エンジニアリング JQS 23.6 2.36 54,478 エンベディング方式(埋込巻線工法)のRFID製品を手掛ける。RFID事業の売上は17年3月期で7.7%の割合(前期6.0%)。
6945 富士通フロンテック 2部 12.7 0.99 43,491 RFID・センサーソリューション RFIDタグ・リーダライタを手掛ける。2016年12月より、アンテナ一体型で業界最薄のRFIDリーダライタを販売。
7705 ジーエルサイエンス 2部 14.6 0.83 15,655 子会社が非接触ICカード、ICカードリーダライタ、システム開発を手掛ける。
6664 オプトエレクトロニクス JQS 14.7 0.86 5,512 自動認識システム開発に注力。バーコードリーダーのレーザーエンジンは世界2位、国内シェア9割。
5162 朝日ラバー JQS 13.2 1.05 4,175 RFIDタグ用ゴム製品などを手掛ける。海外市場向けの受注が好調。
  • 2017年6月16日前場終値データ、時価総額順
  • 各社WEBサイト、各種報道、会社四季報、Astra Managerなどを基にカブドットコム証券作成
  • PER・PBRは連結優先




  • レポートのバックナンバーはこちら


ご注意

  • 「au Kabucom投資情報室」における情報およびサービスは、情報の提供を目的としており、特定の銘柄等の勧誘、売買の推奨、相場動向等の保証等を行うものではありません。
  • 「au Kabucom投資情報室」における情報およびサービスの内容の正確性および信頼性等については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。万一この情報およびサービスに基づいて被ったいかなる損害についても、当社および情報提供者は一切の責任を負いかねます。
  • 「au Kabucom投資情報室」における情報およびサービスに関する著作権を含む一切の権利は、auカブコム証券株式会社に帰属しており、理由の如何を問わず無断での配信、複製、転載、転送および改ざん等を禁止します。
  • 資産運用に関するあらゆる最終決定は、お客さまご自身のご判断とご責任で行ってください。

藤井明代

藤井明代

auカブコム証券 投資情報室 投資アナリスト

東京都出身。大手ネット金融グループを経て、2013年10月よりauカブコム証券。
売買手法や相場解説などを初心者の方にも分かりやすく解説することに定評あり。株主優待にも詳しく、マルチスキルを持つメンバーとして人気上昇中。

まずは無料で口座開設

口座開設

ページの先頭へ戻る