株価は投資家のニーズで決まる!

ここまで、何度かに分けて株式投資の魅力やリスクについて紹介してきました。ここからは、「株価がどう形成されていくか」など基本的なことを知り、実際に株式投資を始めるための準備をしていきましょう。

東京証券取引所をはじめ、日本の株式市場に上場している銘柄の株価は、投資家からの「買い注文」と「売り注文」の価格が一致した値段が、その時点の「株価」となります。よく「株式投資は美人投票」などと言われますが、その銘柄をより高い値段で買いたいという投資家が増えれば株価は上昇し、反対に売りたいという投資家が増えれば株価は下落していきます。つまり、株価は投資家の「買いたい」というニーズと、「売りたい」というニーズのバランスによって動いていくのです。

株価は、短期的には様々な要因で上下を繰り返すものですが、「長期的には業績に収束する」と言われています。「長い目で見れば業績が良い銘柄に投資家の買いたいというニーズが強まり、株価も上昇する」ということです。業績がいい企業、つまり利益が拡大している企業は、1株あたりの利益(企業の最終利益を発行済み株式数で割ったもの)も増えていきます。1株あたりの価値が増えれば、その銘柄の株式全体の価値が上がり、「その銘柄を買いたい」投資家も増えるというイメージです。その銘柄を買いたいという投資家が増えれば、株価は上昇していきます。一方、業績が悪化していくと、その銘柄の株式の価値が下がることによって「売りたい」と考える投資家が増え、株価も下落していくのです。

ちなみに、株式市場では1株あたりの利益のことを「EPS(Earnings Per Share)」、株価をEPSで割ったものを「PER(Price Earnings Ratio、株価収益率)」と呼びます。PERは現在の株価が1株あたりの利益の何倍になるかをあらわし、株価の割安、割高などを計る代表的な株価指標の1つとして、現在でも多くの投資家に支持されています。

「板情報」を見てみよう

ここで、下の「板情報その1」を見てみましょう。

板情報その1

これは、各証券会社から東京証券取引所に届いた投資家の買い注文、売り注文をまとめたもので、ここの中央に表示されている価格は「気配値」、ここに表示されている情報全体は「板情報」と呼ばれています。その銘柄の買い注文の状況は「買い板」、売り注文の状況は「売り板」と呼び、それをまとめたものが「板情報」です。また、右の買いの列に表示されている価格のことを、それぞれ「買い気配値」、左の売りの列に表示されている価格を「売り気配値」と呼びます。

中央の列の気配値の左列、右列に並んでいる数字は、その気配値に入っている投資家の売り注文、買い注文の株数になります。左の列が売り注文数、右側の列が買い注文数です。この「板情報」でいうと7,582円に合計で1,500株の売り注文、7,581円に合計で1400株の買い注文が入っているということになります。“合計で”としたのは、この注文株数が1人の投資家ではなく、複数の投資家の注文の合計である可能性があるからです。

この場合、7,582円に誰かが買いを入れると、「7,582円」で注文が約定し、株価は7,582円と表示されます。この後、「買いたい」と思う人が増えて、7,582円の売り注文が全てなくなってしまうと、次は7,583円の売り注文にターゲットが移ります。そして7,583円に買い注文が入れば、7,583円という株価がつきます。株式市場では、このように買い注文、売り注文を消化しながら、日々の株価が形成されていくのです。

ちなみに、この「板情報」はある日のトヨタ自動車(証券コード:7203)のもの。トヨタ自動車は日本を代表する銘柄の1つで、日々頻繁に売り買いが行われています。大勢の投資家が取引に参加しており、1円刻みで買い注文、売り注文が入っていることがわかるでしょう。しかし、中には日々の出来高が少なく、以下の「板情報その2」のように買い、売りともに気配値の表示が飛び飛びになっている(投資家からの注文がその値段にしか入っていない)銘柄もあります。

板情報その2

こうした銘柄の場合、自分が売りたい、買いたいと思った価格ではなかなか買えない場合や、売りたいと思ってもなかなか売れない場合もありますから、自分が売買しようと思っている銘柄の日々の出来高(売り買いの成立株数)を確認しておくことをオススメします。

この「板情報」は、スマートフォンなどのモバイル端末でもチェックすることが可能ですが、もちろん「板情報」を見ずに売買することも可能です。長期的な視点で投資を行う場合は、1日1日の株価の値動きに惑わされずに投資を続けることが大切になってくるため、むしろ板情報を頻繁にチェックする必要はありません。ただし、こうした基本的な知識を知っておくことで、相場の急変など様々なトラブルにも対応することができるようになるでしょう。株式投資を始める前にいくつかの銘柄の「板情報」を実際に見てみて、「株価はこうやって形成されていくんだな」というイメージを持っておくといいかもしれません。

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