2017年の相場見通し

謹賀新年

2017年の相場見通し

当社投資情報室より、2017年のマーケットついてご案内いたします。 新年のお取引に是非お役立てください。

  • 投資情報室長 山田勉
  • 投資ストラテジスト 河合達憲
  • 投資アナリスト 藤井明代

投資ストラテジスト 河合達憲

予想レンジ

河合達憲

カブドットコム証券 投資情報室 投資ストラテジスト。
近畿大学大学院・博士前期課程修了。日本で数少ない証券専攻修士号のマスター称号を有する。中堅証券調査部にて調査・情報畑一筋で20数年来、企業調査や投資戦略、投資手法などのストラテジー構築に従事。ファンダメンタルとテクニカルを融合した投資分析を実践しており、各種マネー誌や月刊宝島、夕刊フジ等の銘柄推奨コンペティションでの優勝など各賞を多数受賞した実績により推奨銘柄の的中率の高さは実証済み。マクロ分析から個別銘柄までトップダウンアプローチでの分析力も定評。近著『9割の人が株で勝てない本当の理由』(扶桑社)、最新刊『株の五輪書』(マガジンハウス)など著書多数。毎週火曜夜のkabu.comストラテジーセミナーが大人気を博し、TV・ラジオにも多数のレギュラー出演する傍ら、2013年より大阪国際大学、および大阪国際大学短期大学部にて大学講師としても登壇中。

<ご年賀>2017年投資ストラテジー「申酉(さるとり)騒ぐ」の延長戦!?」

旧年中は弊社・カブドットコム証券をご高配賜り誠に有難うございました。お客さまの投資の一助となるべく鋭意研鑽に努めて参る所存でございます。2017年も引続きカブドットコム証券をご愛顧賜りますよう宜しくお願い申し上げます。

昨2016年は「申酉(さるとり)騒ぐ」の最初の年であり、日経平均は前年2015年末の19,000円台から2月と6月に15,000円を割込む急落を示し、ダブルボトムを形成した。6月24日の英国EU離脱のBrexitと、11月8日の米大統領選挙が2016年のエポックであり、2017年相場を予測するうえで念頭におかねばならない出来事だ。
更に、2016年12月14日のFOMCでの2回目の米利上げは、世界の金融市場を見通す上で重要事項である。日米欧、三極の金融市場のバランスは、米国が金利上昇、日・欧が金融緩和というアンバランスな構造のなかで連動していることを常に注視しておかねばならない。なぜなら、リーマンショックまでは世界は「ワンワールド・ワンマーケット化」が進み、金融政策もほぼ同じ方向を向いていたが、2015年12月16日の9年半ぶりのリーマンショック後初の米利上げから世界の金融構造はアンバランスな枠組みのなかで形成されており、金利差から生じる兌換レートである為替レートも教科書通りには動かなくなっている。

2017年の「申酉(さるとり)騒ぐ」の後半戦の「酉年騒ぐ」は前年の申年に続き、引き続き変動率の高い高ボラティリティな相場が想定される。高ボラな相場といっても、上に向けての高変化率なのか、下に向けての高変化率なのかを見極める必要があろう。

さて、年始にあたり「2017年の投資ポイント」についてご報告しておきたい。
2016年11月8日の「米大統領選トランプ勝利」から1ヵ月半が経ち、日米の株・為替の推移を整理しておくと、米大統領選直前の11月8日から直近高値(円安値)まで各々のパフォーマンスは、、、
・米NYダウ、18,332ドル→19,987ドル(12月20日高値)・幅1,655ドル・率+9.03%・29立会い日
・日経平均、17,171円→19,592円(12月21日高値)・幅2,421円・率+14.1%・30立会い日
・ドル円レート、105.10→118.66(12月15日円安値)・幅13.56円・率12.9%・27立会い日

2017年相場を読み抜く上で、2016年最後の1ヵ月半の日米株価とドル円レートの変化率は最重要であることはいうまでもない。なぜなら、わずか1ヵ月半で、日経平均もドル円も発射台が大きく変わったからである。相場予測において、1年間という(相場予測の上では)長い期間の推移を予測する場合、発射台の位置と角度を正確に捉えておかなければ到達点は大きくズレることになる。遠距離の艦砲射撃をする場合に距離が長ければ長いほど発射台の位置と角度がズレれば到達点が大きくハズれるイメージを持って頂ければお分かり頂けるだろう。
さて、19,000円台乗せという位置から景色をみると、上は2万円台乗せへの頂が見え、下は16,111円という大統領選後のショック安の谷底が見える。アベノミクス後の高値は2015年6月24日の20,952円だが、その頂は2万円台というフシ目に立ってみないと見えない。頂上への景色とはそういうものだろう。登山でいえばピークアタックは、9合目辺りでのベースキャンプから挑むものであり、頂が高ければ高いほど、9合目での‘慣らし’が必要になるのである。

2017年の相場を捉える上で、現在という発射台から2つのファンダメンタルの改善点に着目しておきたい。
1つは米国の企業業績が「気絶しそうなくらいの改善」をみせていること。(一昨年のアップル決算での同社CEOのコメントを借りました)。もう1つは日本企業の来期2017年度の業績がうまくいくと20%増益を狙えるかもしれないということである。
特に、日本企業の来年度業績については、今期の中間決算を終えた直後の急速な円安で、同中間期で下方修正した東証1部の384社が「リバース」して再上方修正し直す可能性が高まっていることも掲げておきたい。

まず、1つめの米国決算だが、2016年11月下旬に7-9月期の決算発表の全行程を終え、S&P500種ベースの1株当り利益の前年同期比は、事前予想段階では▲2.7%の減益が予想されていた(トムソンロイター集計ベース)。ここ5四半期続く減益の中では、減益率はやや小幅に縮小してきたものの5四半期連続減益という汚点は米国株価が8月高値からじりじりと切下げる主因でもあった。(NYダウは8月15日高値18,668ドルから大統領選直前11月4日安値17,883ドルまで約800ドル近く下落していた)
ところが、決算発表が進むにつれて金融セクターの収益は力強くリードし、エネルギーセクターの大幅減益幅も大きく改善したことで、一転して+4.1%増益に転じたのである。絶対値でいえば約7%近い幅で減益予想から増益に転身した。さらに同時に先行き見通しを集計すると、10-12月期は+6.0%増益、2017年1-3月期はなんと+14.0%が見込まれている。いづれも市場予想(=アナリストコンセンサス予想)だが、1-3月期に2ケタの増益が見込めることは株価を押し上げるには充分な好環境といえよう。

2016年11月9日から始まったトランプラリーで、長期金利の上昇や急速なドル高、そして米国株高と、あたかもトランプ新大統領の財政出動政策や減税策やインフラ投資への期待で金融環境が一変したと捉われがちだが、実は、米企業業績が減益から一転して増益に転じたことや、10-12月期・1-3月期の好業績予想が株高の根底を支えている面が多いと分析している。
なぜなら、トランプラリーが始まったのは2016年11月8日の大統領選の翌日11月9日からであり、同ラリーは3営業日ほどで一旦踊り場に達しモミ合っていた。次にもう一段高し始めてNYダウが19,000ドル台乗せしたのは11月22日辺りからだ。決算発表が出揃ったのは11月20日頃であったことを重ね合せると、第2弾の上昇は先述の好決算予想を受けた一段高と推察されよう。

次に、今中間期を終えたところで日本企業の業績予想を集計した。売上高・営業利益・経常利益・最終利益と、各利益ステージの業績予想を集計することでみえてくることが一点ある。
まず会社側予想の今通期予想はかなりネガティブであるということだ。その要因は「円高」に他ならないだろう。
225種採用銘柄全体では、売上高は▲6.7%減収、経常益は▲3.5%減益の予想である。一方、アナリストコンセンサス予想平均でも売上高は▲2.6%減収だが、経常利益は+1.0%増益とここで差がでてくる。これは想定為替レートの違いであることは‘ありがち’だが、最終利益はさらに会社側予想とコンセンサス予想で開きがある。それぞれ+4.3%増益と+9.3%増益と今通期はコンセンサス予想ではほぼ2ケタ近い増益予想となっている。
また、来期のコンセンサス予想は売上高+2.7%増収、経常益+10.2%増益、最終益+13.2%増益である。
ここで問題は、この予想集計値が中間決算を終えた11月15日で締めた予想であるということだ。日程の間合いを勘案すると今回の集計の想定為替レートはトランプラリーで一気に円安に振れた1ドル110円以上を想定としていないという点が重要である。
恐らく、通期業績予想の前提となる想定レートの平均は103円~105円程度とみている。(ちなみにドル円レートの7-9月平均は102.38円、4-9月平均は105.16円、さらに10-11月平均は106.49円である)
つまり、ネガティブ発想からポジティブ発想に脳内転換するために、念頭に置きたいのは、来期最終利益のコンセンサス予想は+13%増益予想であることと、その予想の元となった想定為替レートは105円程度であるということ。このまま下期の折り返しである1-3月期が1ドル110円以上の為替水準で推移すれば、今通期の下半期を上方修正して着地するか、もしくは来期予想を+13%予想にプラスオンする予想が見えるかもしれないということだ。
冒頭に述べた「日本企業の来期業績がうまくいくと20%増益になる可能性がある」というロジックが為替の円安水準訂正というのは少し情けないが、まぁ、大幅増益になるのだからそこは「結果よければ全てよし」で。
バリュエーション試算からみた日経平均上値予測を掲げておきたい。
日経平均EPS 1,177.70円(12月26日現在)
 ⇒10%増益1,295.47円×16倍≒20,700円
 ⇒15%増益1,354.36円×16倍≒21,700円
 ⇒20%増益1,413.24円×16倍≒22,600円

最後にリスク面では、欧州と中国が挙げられよう。2016年のBrexitとトランプ新大統領誕生は、世界への「ポピュリズム」拡大の先導役となった。自国第一や保護主義は世界的な拡がりを見せるだろう。特に、欧州ではイタリアやフランスがグラつきだしている。本年、英国EU離脱のスキームが進展すればするほど欧州でのEU崩壊の波は大きくなり、対ドイツとの対立の構図が明確となる。中国もすでに大きく格差がでた社会構造に決定的な解決策は見いだせぬまま、アメリカ対立・日本対立という仮想外敵という民衆の‘ガス抜き’政策だけでは行き詰っている。2016年に明確となったポピュリズムの波が欧州・中国、ひいては世界にプチ信用不安を引き起こすことは2017年の懸念事項として捉えておきたい。

年初にあたり、2017年は前年より幾分か日米企業業績の点で明るい観測がでてきた。やはり、ファンダメンタルが好調であるということは、株価の上値が予測し易くなることや調整局面があっても深い押しを覚悟する必要がないことが楽観シナリオの大元になる。
1年の投資ストラテジーを構築する際に、基本上値を想定したうえで調整時の下値を計測するという“引き算”の戦略ならば、物色は外需系(円安好感の自動車・ハイテク大型株)と内需系(好業績出遅れ、ゼネコン・IT関連・スマホゲーム等)の、大きな循環物色という基本形のもとで、調整局面ではショート(カラ売り)やインバース型連動ETFなどを上手く組み合わせたロング-ショート型のストラテジーを立案する必要があるのではないかと推察している。

2016年前半の軟調な相場が「去る(申)」ことを願い、2017年はトリのように飛躍したいものだが、酉(ニワトリは飛べないので)は地面でバタバタ羽ばたくことになるのだろうか。本年も皆さまの投資の成功を祈りつつ。。。(河合達憲 拝)

2017年の日経平均想定レンジと重要ポイント

・1-3月---19,000円~21,000円Λ (1月20日)米大統領就任式、(1月下旬~2月上旬)第3Q決算
・4-6月---19,500円~22,500円↗ (5月)2017年度決算発表(堅調期待)
・7-9月---17,500円~20,000円↘ (7~9月)欧州選挙及び国民投票など多
・10-12月---19,000円~20,500円↗ (10月下旬~11月上旬)中間決算(上方修正期待)

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