2018年の相場見通し

謹賀新年

2018年の相場見通し

当社投資情報室より、2018年のマーケットついてご案内いたします。 新年のお取引に是非お役立てください。

  • マーケットアナリスト 山田勉
  • 投資ストラテジスト 河合達憲
  • 投資アナリスト 藤井明代

投資ストラテジスト 河合達憲

予想レンジ

河合達憲

カブドットコム証券 投資情報室 投資ストラテジスト。
近畿大学大学院・博士前期課程修了。日本で数少ない証券専攻修士号のマスター称号を有する。中堅証券調査部にて調査・情報畑一筋で20数年来、企業調査や投資戦略、投資手法などのストラテジー構築に従事。ファンダメンタルとテクニカルを融合した投資分析を実践しており、各種マネー誌や月刊宝島、夕刊フジ等の銘柄推奨コンペティションでの優勝など各賞を多数受賞した実績により推奨銘柄の的中率の高さは実証済み。マクロ分析から個別銘柄までトップダウンアプローチでの分析力も定評。近著『9割の人が株で勝てない本当の理由』(扶桑社)、最新刊『株の五輪書』(マガジンハウス)など著書多数。毎週火曜夜のkabu.comストラテジーセミナーが大人気を博し、TV・ラジオにも多数のレギュラー出演する傍ら、2013年より大阪国際大学、および大阪国際大学短期大学部にて大学講師としても登壇中。

<ご年賀>2018年投資ストラテジー「戌(いぬ)笑う」年になるのか!?

旧年中は弊社・カブドットコム証券をご高配賜り誠に有難うございました。お客様の投資の一助となるべく鋭意研鑽に努めて参る所存でございます。2018年も引続きカブドットコム証券をご愛顧賜りますよう宜しくお願い申し上げます。

今はバブルか!?

昨2017年は日経平均の年足での6年連続陽線が確定し、2018年はいよいよ7年連続陽線の記録に挑戦する年である。過去の陽線最長記録は、80年代バブルを形成した1978年~1989年までの12年連続陽線であり、同記録を更新するには2022年まで陽線ならばタイ記録、2023年まで陽線が続けば記録更新ということになる。つまり、昨2017年までの6年連続陽線は記録更新までまだ五合目辺りということだ。

過去記録の比較対象として80年代バブル時を持ち出さねばならないということは、相場は既に‘失われた20数年’をクリアしたということではないか。例えば、長らく到達できなかった日経平均22,666円という戻り高値(1996年6月)を約21年5ヵ月ぶりに更新したことで、水準比較は90年や91年水準との比較が応答することになる。日経平均の現23,000円水準は91年年末辺り、今後25,000円であれば91年6月、同30,000円であれば90年8月辺りということになる。
さらに、2017年10月の16立会い連騰記録は歴代記録を抜き去り、過去記録では2位が14立会い連騰の1960年代の岩戸景気、3位の13立会い連騰が1988年の80年代バブル時である。

よって、2018年は過去のバブル分析が流行となり参考になるかもしれない。80年代バブルや2000年ITバブルを経験してきた小職のいくつかの心得となった答えは“バブルは終わって初めて気づく”ことだ。バブルの真っ只中にいる当事者は世代を超えて実はあまり実感しないものである。そして、バブルの恩恵を受けている業界やセクターは意外と狭く、また当事者達はそれがバブルだとは気付いていないのが実情だったのではないか。後になって、あの時はバブルだったのか!と気づくのだろう。1万円札でタクシーを止めていた頃はこれがバブルだとは思っていないだろう。当時のタクシーを止める有効な方法論、単にそれだけのことだ。

2018年を読み抜く3つのポイント

2018年を読み抜く上で、いくつかのチェックポイントを掲げておきたい。まず、米国株の史上最高値更新ラリーはいつまで・いくらまで続くのか、次に日本株の上値算定はバリュエーションの呪縛を超えられるのか。最後にリスク要因は何か?この3点を注視しておきたい。

まず、米国株高の持続性だが、2018年も3回の利上げの予測が大勢を占めているが、これらが景気回復のブレーキとなることを回避できるかどうかが問題となろう。2017年12月の利上げがリーマンショック後の今回の利上げ局面で5回目の利上げとなる。利上げがオーバーキル(政策の行き過ぎ)となる要素はどこにでも潜んでいる。実体景気の計測を誤れば利上げは即座に株価急落の要因となりうるし、慎重を期するために利上げを見送れば景気への懐疑心が芽生え、これも株安の引き金となりうる。2018年は利上げの行方が重要視される理由は、景気≒株価がどこまで利上げに耐えうるかという計測が極めて重要となるからだ。
過去の事例では2000年のITバブル時の株価急落は1999年6月の利上げスタートから5回目の0.25%の利上げで株価はピークアウトし、6回目の0.5%の利上げによってダメ押しの急落を招いた。ナスダック指数は2000年3月の5,000pt台から2002年10月の1,100pt台まで約5分の1に下落、約2年半の調整期間を招いた。また同高値を回復するのに約15年の歳月を要した。
つまり、米国株高ラリーは、約6週間毎に開催されるFOMC(連邦公開市場委員会)において利上げが目される毎に一旦はピークをつけ、その後の反発ポテンシャルは、景気回復と企業業績に委ねられる。現状のNYダウでいえば3万ドル回復は、年間の単利20%の上昇で達成されるが、現在のバリューでは政策だのみということだ。ただ、トランプの税制改革や一連のインフラ政策がどこまで寄与するかは未知数であるが・・。

さらに、2月の任期終了後のFRB議長の交代も米国の金融構造の変化を捉えるうえで重要だ。イエレン議長の采配と功績は称賛に値する。
イエレン議長は任期中に米失業率を6.7%から4.1%まで低下させた。米国の失業率は巡航速度で5%前後が目安であるとすれば、米労働市場はほぼ完全雇用に近い状態といってよいだろう。また、副議長時代からの8年間で約1,700万人の雇用創出を達成している。これらは明らかにイエレン議長の功績といえよう。前任のバーナンキ議長は2006年から2014年までの2期の議長時代の大半をリーマンショックの事後処理と景気の立て直しに力を発揮し、道筋がみえたところでイエレン議長にバトン交代となった。
実は近年の1951年以降で任期1期で議長を交代したことはない。1930年代から40年代にかけては1期4年のみという議長は複数存在するが、1951年から70年まで5期連続で議長を務めたマーティンJr.元議長以降は、ほぼ2期が踏襲されている。最も近い1期のみの議長は1948年~51年任期のマッカーベ元議長であり、今回の1期退任は67年ぶりである。
慣習的な2期8年の任期を1期で退けて新たにパウエル氏の議長就任が予定されていることは、米国内での政治力学が作用したとしても、やはり異例といわざるをえない。それゆえに、後任予定のパウエル氏の力量が問われるのである。まずは2月の議長交代後の動きは要注意だ。

次に、日本株の上値算定はバリュエーションの呪縛を超えられるのか。日本市場は成熟化しており、欧米諸国と同様にPERのレンジ推移に囚われる市場としてみる必要がある。PER理論は成熟国を分析する上では諸刃の刃といえる。上抜けもしない替りに底割れもしない。具体的には日経平均は15倍をミッドレンジとした±1.5倍~2倍のレンジを超えることは想定しづらくなる。成長株(≒成長国)であれば、PER20倍超えでも理論上は算定できるものの、成熟国は当てはまりづらいということだ。やはり、ファンダメンタルが重視される市場になることを念頭に置かねばならない。
具体的には、日経平均は予想PER13.5倍~16.5倍のレンジの中での推移がロジックとして正当性をもつようになるであろう。2017年度の日経平均予想EPS(一株当たり利益)は約1,520円、最終利益は前期比11.8%増益ということが現在の企業業績の実力だ。先のPERレンジを当てはめると20,500円~25,100円がPERから試算される想定レンジであり、今年度3月までの立ち位置といえよう。
来2018年度の同利益が5%増益予想を前提とした予想EPSは約1,600円、PER想定レンジ試算では21,600円~26,400円。同利益が10%増益を前提とすれば、予想EPSは1,670円・同レンジ22,500円~27,600円が試算される。
ファンダメンタルが重視される成熟市場において、このレンジから上放れ・下放れとなるには、相当の市場が予期せぬ“何か”が起こらねばならない。その“何か”があるのかないのか、また“何か”は一過性か継続的なものか、それらを分析するのが腕の見せ所といえるだろう。
また、株価のアノマリー分析からのアプローチでは、アベノミクスが本格スタートした2013年から5年間の1年毎の株価推移を計測すると、2つの事が判る。一つはアベノミクス以降の5年間は、1月もしくは2月に底をつけ、年末高を示していることが共通している。そして5ヵ年平均の年末までのパフォーマンスは約2割。簡単にいうと、年間ベースでは年初から約5%低下した1月か2月の底値で仕込み、年末までバイ&ホールドすると約25%のパフォーマンスを獲得できたことが平均モデルとなる。あくまでも平均モデルでの参考推移だが、この5ヵ年平均推移モデルにもっとも近い動きを示したのが実は2017年である。2018年が2017年と同じようにファンダメンタル環境が似通ったものという前提であれば、2018年もこの5ヵ年平均推移モデルが参考となろう。

【近年の日経平均 年間推移モデル】

  • 日経平均過去データよりカブドットコム証券作成
  • 日経平均(日足・終値ベース)、年初終値を100とした推移
  • 2017年は12月21日までを明示

最後にリスク要因は何か?大きく2つが挙げられよう。
一つは地政学的リスクだ。これは北朝鮮と中東が最も警戒すべきリスクである。もっとも、地政学リスクは事前に想定しづらい事象である。ニュースラインを入念に点検しても、様々なノイズが入り、なかなか真相には辿りつけない。そこで、危機計測指標を定め、それをリスクの代替指標としてチェックし、投資の強弱感を養う必要があるのではないか。例えば、北朝鮮問題の深刻さを知るにはKOSPI(韓国総合指数)をチェックしておくとか、中東問題は原油価格の動き(特に北海ブレント先物が敏感か)で危機計測を代替する方法だ。
さらにもう一つのリスクは、米国株のリスクだ。現時点で世界中の主要指標のなかで長きに亘り過熱しているのはナスダック指数といえよう(ビットコイン除く)。史上最高値を更新している指標は常に監視対象とすべきである。この米国株リスクは、先述の2月FRB議長交代と11月の米中間選挙が要注意である。まずは2月からのパウエル新議長の年間を通じた利上げへの政策対応は、手腕のお手並み拝見といったところか。最も警戒すべきは11月の中間選挙である。11月選挙が近づくにつれ、トランプツィートからの混乱を市場は見逃さないであろう。

「戌笑う」2018年へ

2016年・2017年は「申酉(さるとり)騒ぐ」のごとく2年続けて騒がしい年であった。
2016年は、企業業績が2012年末から続くアベノミクスの回復過程での踊り場として低迷するなか、6月24日の英国EU離脱のBrexitと、11月8日の米大統領選挙により、振り返れば確かに騒がしい年であった。年初大発会からの日経平均6日連続安が2016年を象徴する相場推移であったといえよう。(年末にトランプラリーで救われたが・・・)
続く昨2017年はトランプ米大統領の就任式に始まり、北朝鮮問題への地政学的リスクが高まった。さらに年末にかけてはイスラエル首都問題により中東混乱が急速に浮上した。やはり酉騒いだ年であったといえる。2017年の一年を通じては、日経平均は1月~9月までわずか2,000円幅でこう着状態であったが、9月8日を底にわずか2ヵ月で4100円の急騰を示した。この4,100円高の背景は、衆議院解散総選挙→自民党圧勝による政局の安定、中間決算での企業業績堅調さの安心感、米国株史上最高値更新ラリー、などがプラス材料として複合的に重なったことが挙げられる。

2018年は半島情勢と中東問題が相場の重しとなる懸念があろう。また米中間選挙の年でもあり、トランプツィートが炸裂するのだろうか。
末筆ながら、2016年2017年の申酉騒ぐの2年が過ぎ、2018年は戌笑うがごとく、マーケットが高笑いする希望を胸に、本年も皆さまの投資の成功を祈りつつ。。。

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